おばちゃんの料理、おいしいわ


我が家に初めてNさんを迎えて

初めてわが家に来たときは日帰りで、家の様子を見てもらいました。

女の子ですからパジャマとか布団カバーなどは好みの物を買ってあげた方がいいだろうということで、初回は一緒に買い物に行きました。

気に入ったものを買って、帰りはバスで20分ほどの距離なんですけど、バス停に停まるたびに「次?」って聞くんです。
どうしてかなと思ってバスを降りてから尋ねてみたら、バス酔いして気分が悪かったことを知ったんです。

私はそんなこと全く分からず、かわいそうなことをしたなと思いました。
初めての場所で、初めての人と買い物をして、極度の緊張からバス酔いしたんだと思います。

それも言えなかったことが分かって、教えてくれたら途中で降りたのに…と言ったことがありました。

帰宅して、ケーキと紅茶を用意したんです。

ミルクティで砂糖はスティックシュガーだったのですが、「これ何?」って聞くんです。それは砂糖で、袋を破って使うことも話したんです。

その時、施設生活ではこんな小さなことも知る機会がないと分かって、家庭生活を経験することが大切なんだと思いました。

初めてわが家に泊まったのは春休みでした。王子動物園に花見に行きました。

動物が好きなのか、私のカメラを「貸して」と言って、いっぱい写真を撮っていました。

それをプリントして小さいアルバムを作りました。
乗りたい乗り物に乗って、レストランで食事して、「すごく楽しかった」と言ってくれたんです。

多分、今まで施設から何回も動物園に行ったことがあると思うのですが、自分の好きなように行動して、好きな乗り物に乗れることがうれしかったんだろうなと思いました。

わが家に来るまでに大きな商店街があって、そこで買い物をしながら家まで行くんです。

好きなお菓子を買ったり、食材を買ったり、ホルモン焼きを食べたこともありました。
「おばちゃん、ここの美味しいわ」と、それからやみつきになってます。

食べ物は納豆とキムチが好きだと聞いていたので、彼女が来るときは必ず用意しています。カレーや丼ものが多いです。

「おばちゃんの作る料理は美味しいから楽しみやねん」と上手に言ってくれるんです。
私の料理を美味しいと言ってくれるのは、その子だけです。

先日は、ハヤシライスをしたんですが、「美味しいわ」と言って、ご飯粒一つも残さず本当にきれいに食べるんです。

「きれいに食べて感心するわ」と言ったら、「施設でそうしているから」と言いました。
「施設どうこう関係なく、作った人もうれしいから、きれいに食べることは大事やで」と話しました。

八宝菜をしたときに「様々な野菜を調理するので八宝菜やけど、わが家は具材が少ないから五宝菜やな」と私が言うと、「おばちゃん、それおもしろい」と返してくれて、そんな冗談も交わしながら生活しています。

わが家の朝食はパン食なんです。トースト、目玉焼き、紅茶というスタイルなんです。
「パンでいい?」と聞くと「いいよ」と言ったので、それを続けていたのですが、

随分時間がたってから「おばちゃん、私、本当はご飯がいいねん」って言ったのです。
遠慮して言えなかったんでしょうね。

慣れてきたので自分の好みも言えるようになったんですかね。
それからは、ご飯とみそ汁と、好きな納豆、キムチのご飯になったんです。

この間は娘が回転ずしに行きたいと言ったので出かけたのですが、その帰り道にその子が「私はおばちゃんの晩ご飯が楽しみやから、家で作ってもらう方がいい」と言ったのです。

せっかく食べに行ったのにと思うのと、うれしい気持ちで複雑でした。

特に私が料理上手ということはないと思うのですが、家族団らんというか食卓を囲んで食べるのが美味しいのかなと思いました。