おばちゃんの料理、おいしいわ


二人でのショッピングが楽しみ

Nさんの趣味は映画なんです。

最近、中高生向きの若手俳優の出演している映画がありますね。この間は「氷菓」という映画を観に行きました。
彼女が観たいという映画は、見に行くようにしています。

映画の後は、女の子ですのでショッピングしたいと言うと、三宮を行ったり来たりしています。

そんな時、「おばちゃん大丈夫?歩ける?」と気遣ってくれるんです。店内に椅子があると「一人で待っといて。一人で見てくるから」と言われることもあります。

高校生ですからおしゃれもしたいし、友だち同士の話題もあるし、時には化粧品なんかも手にしたりしています。

初めの頃は、帰りの電車に乗ると黙ってしまうんですよ。

電車のドアのところでじっとしているんです。機嫌を損ねるようなことを言ったのかな、と思ったり、心配していたんですが、施設が近づくと「今度はいつ帰れる?」と聞いてくれるんです。
その言葉で安心して、次はいついつと約束するんです。

以前のボランティア里親交流会でも話題にしたことがあるのですが、このことは、ほかの里親さんたちも経験していることだと分かりました。
里親さん宅で楽しい思いをして施設に帰るとなると、寂しい気持ちにもなりますよ。

でも、最近はずっとしゃべりっぱなしです。高校生になったので、学校での話をしてくれます。
中学生の時は、施設から教えてもらって学校の運動会や音楽会も見に行っていました。

写真を撮って中学生時代のフォトブックを作ったんです。

ところが高校生になると、恥ずかしいのか撮らしてくれなくて、高校生になってからの写真は4枚しかないんです。
卒業するまでにバチバチ撮って、高校時代のアルバムを作ろうと考えているんです。

 

私には小学校低学年と保育園の男の子の孫が2人いてお正月にはその子たちが必ず泊まりに来るんです。

そしたら娘が、高校生の女の子がいるところに2人の男の子が来たらガチャガチャうるさいだろうから、来させない方がいいのでは…と言っていたんですが、

家庭養護促進協会に相談したら、「そういうのも含めてボランティア里親をやってもらったらいい」と言われて、それまで肩に力が入っていたのが楽になって、自然体で迎えられるようになりました。

今では孫たちが来るのと同じような感覚でNさんを迎えていて、春休みと夏休みと冬休み、あとはその間に1回ずつ来てもらっています。

たいてい1泊か2泊なんですけど、年末年始は30日から1月3日までで、年末にはお節料理を手伝ってもらったり、自分の部屋の掃除をしてもらっています。

元旦は楠公さん(湊川神社)に初詣に行きます。

二日は近所の妹の家にみんな集まることになっているのでそこに行ってます。三日は買い物をして施設に送っていくというパターンになっています。

中学三年生の時は、「高校受験を控えているので合格祈願をせなあかんから」と、三社参り(生田神社・楠公さん・長田神社)をしました。合格した際には電話をもらって、よかったなあと一緒に喜びました。

子どもたちは普段、施設で生活しているので、何人かで一部屋を使っているんですね。そこで多少は我慢しているだろうから、家に来たときは自分を解放した気分を味わってほしいと思っています。

今は高校生ですからスマホが放せないんですね。テレビを見ていてもずっと操作をしています。

ただ、「歩きスマホは危ないから止めときよ」とは言っています。

スマホがなかった中学生の頃は、たいくつだろうからと、アイドル誌などを買ってあげて、テレビを見ながらでも読んで時間を過ごしていました。

就職してからも家に帰ってきてくれたらいい

私はボランティア里親として週末とか長期の休みにだけNさんを迎えているんですけど、本当にこれで役に立っているんだろうかと思っていたんです。

そんな折に、里親月間の10月に、明石で里親フォーラムがあったんです。

そこで養親さんと成人した養子のトークセッションがあって、その養子の男性が「週末でも季節でもいいから、子どもに家庭を経験させてあげてほしい」と言われていました。

それを聞いて、私の迷いも消えて、ボランティア里親を続けてきてよかったなあと思いました。

彼女は卒業すると施設を退所することになりますが、就職も住むところも決まっているので、ボランティア里親という制度上の関係は終了しますが、「家に来るのは、いつでもOK」と言うつもりです。

何かあった時に相談できるところがないと困るでしょうから。

私はこの5年間、一人の子どもとだけ関わってきましたが、1対1の関係がとても大切だと思っています。
自分だけを見てくれる人がいるということが、心の安らぎになったり励みになったりすると思うからです。

まだまだ多くの子どもたちが里親との出会いを待っているのであれば、一人でも多くの方に里親になってもらえたらなあと願っております。

 

【2017年11月17日開催 ボランティア里親の募集と説明会】
(はーもにい第128号より)