「試し行動」への対応について


3歳を前に里親宅で暮らすことになったCちゃんは、自分の思うように出来なかった時に大きな声を出したり、里父母を思いきりたたいたりしていました。

親戚の子どもたちや他の大人にはそのような行動は見られていないため、里親さんは

「自分たちだから欲求を出せているのかな」と感じたようです。

たたかれた際には、「たたかれたら痛いこと、里母自身が悲しいと思ったこと」などを説明しています。

話した後、少し時間をおくとCちゃんも落ち着いて謝ることができるようです。

子ども自身が何かを訴える方法として出している行動ではありますが、この里親さんのように、「たたかれたら痛い」ということをしっかり伝え、相手がどのように感じるのかをきちんと説明することは大切なことです。

一回話をしても収まる行動ではなく、根気がいる作業ではありますが、その関わりが子どもがこれからの対人関係を築く土台になると思います。


「試し行動」の程度や期間は子どもによって違い、その時期はいずれ終わるのですが、その真っ最中にいる時は先が見えずに心身共に疲れてしまう里親さんもいます。

その時期をどのように乗り越えていくのか・・・

先輩里親さんたちは、こんな風に乗り越えておられました。

「里母に試し行動が出ている時は里父や実子から話をしてもらったり協力してもらった。」

試し行動は主たる養育者となる里母に対して強く出ることが多いので、里父や他の家族と協力しながら対応することが欠かせません。

★「研修会や書籍で『試し行動』の具体的な様子やその行動がおこる理由について知っていたので、少し余裕を持って対応できた。」

子どもが示す行動を事前に学ぶことで、心構えが出来て戸惑いを少なくすることができます。

また、子どもの行動に対応する自分自身のことを客観的に見ることも大事なことです。

自分がどんなときにイライラしてしまうのか、しんどくなるのか、それを解消する方法は何かを自覚しておくことで対処できることもあると思います。


今年度の協会の年次総会でお話しいただいた児童精神科医の金井剛氏は

「乳幼児が里親を試してやるという意図を持っているとは思えませんし、すねたり、怒ったり、甘えたり、悪さをしたりということは親子が愛着を作っていく過程で当たり前に繰り返されることですから、「愛着形成行動」と名付けるべきだと考えています」(「福祉現場で役立つ子どもと親の精神科」より)

とおっしゃっています。

このような考え方を知っておくことも、「赤ちゃん返り」「試し行動」は特別なことではないと感じられ、気持ちを楽な方向にシフトチェンジできるきっかけとなるかもしれません。

(2012年10月10日:はーもにい106号より)