もらった愛情のお返しをしたい


やさしい子どもたちに恵まれて私は幸せ

聞き手
結婚するとき、あなた、神戸にきて、私をたずねてきたよね

ゆりか
一回たずねましたね。生みの親のことで。

「私にも生みの親がいるんや、私がこうして幸せでいるのも、産んでくれた親がいるからなんやな」って思って。

生きているならば会いたいなって一瞬思ったことがあるんです。今でもあります。生みの親はどこかにおってんやろなって。

でも、そういう風に思うのも、里親のお父さんやお母さんに悪いなって思う気持も少しはあるんです。
会いたいなって思ったり、悪いなって思って、気が変わったりする。

父が亡くなってからは、そんなこと思ったことない。自分の中では里親のお父さん、お母さんが親なんやなって思ってる。

父が亡くなったのは5月の連休やったんよね。私がお父さんに「お母さんの言うことききよ」って言って帰った翌日に亡くなった。

その日の朝もお父さんと話していて、蕗の炊き方をお母さんに電話して聞いたときに、お父さんとも話して「お母さんに世話かけたらあかんで」って話した後やったから、亡くなったのは。

兄とは、何も言わなくてもお互いにして欲しいことがよく分かる。お父さん、お母さんも良かったけど、きょうだいみんな良かったんやね。

兄がね、「○○会(ゆりかさんが育った里親宅の会)を発足しよう」って言って、里子も父も母も温泉に泊まったりして楽しんだ。父が亡くなったので、5回ぐらいで終わっているんやけど、そのころ23人ぐらいその会に入っていた。

聞き手
結局子どもは里親宅に何人いたことになるの?

ゆりか
全部で10人。でも父は13人いたって言うのよね。私の知らない間にいたのかな?

聞き手
あなたの家庭の子どもは今いくつ?

ゆりか
上が高校1年生で、下の子が6年生。
私は山や田んぼや畑には連れて行くし、自然と触れ合って育ったものやから、ちっちゃいころは本当によく遊んだ。
自転車で送り迎えすればいいところを歩いて、草花と触れ合わせたりしたけど、あまり余裕はなかったかな。子育てで必死やった。

聞き手
特に一番目の子?

ゆりか
2人目は全然違うんですよ。
上は優しい子で、女の子みたいな子やけど、下は出っ放し。どこへいったんやろ?っていうぐらい家にいない。
今やっと余裕ができた。

おじいちゃん、おばあちゃんに対してもきょうだいに対しても、2人とも優しいなと思います。そんな風に育ってくれたことがすごく幸せ。

私が寝込んだとき、子どもたちがよくしてくれたんです。
点滴しながら、夜中に這ってトイレに行こうとしていた時、立てないから電気つけられないので、真っ暗の中を這っていってたら、隣に寝てた次男が、起こすわけでもないのに、そっと起きて電気つけてくれるんよね。

「いい子に育ったな」って思うわ。
カブトムシ一匹亡くなったらおいおい泣くんですよ。優しい子です。

聞き手
これからの家族の目標や希望は?

ゆりか
主人は、「子どもが大学に行ってくれて、いい会社に」って言うんやけど、私はそんなことは思わない。
「いい人にめぐりあって、同じようないい家族を作ってくれること。」それが一番かな。

聞き手
自分が子どもに接しているのを見て、お父さんお母さんの影響受けていると思う?

ゆりか
「お父さんやったらこうしていたのになぁ、お母さんやったらこうしていたのになぁ」って思うことが多い。

子どもも、もっとのびのびとさせたいと思うことが多い。
お父さん、お母さんやったら黙ってみていることもあったやろうけど、同じようにはいかない。

でも、人を思いやるっていう気持ちが2人の子にはあるっていうのは、お父さん、お母さんの気持ちを受け継いでいるかな?

亡くなった父が今でも生きてくれてたらなって思う。

身近に私の生い立ちを話してる人がいるんだけど、「そういうお父さんに育ててもらったから今のあなたがいるんやなー、会ってないけどお父さんとお母さんはいい人やったんやな」ってよく言ってくれるんです。自慢の親やね。

聞き手
里親制度がこんなふうになったらいいなって思うことある?

ゆりか
施設から子どもを預かるのがもっと簡単にできたら、一週間とか夏休みとか見てあげられるのにーって思う。

聞き手
季節里親という方法があるけど、そういう制度が知れ渡る機会が少ない。

ゆりか
私の兄は昔の寺子屋みたいな感じで、一つの山を買い取ってチャボとか鶏とかを飼って、畑を作ったりして子どもたちに自然体験をさせたいっていう夢があるの。
もうすぐ会社を引退だからそれが夢だって。

兄は近所の子でいいんだって言うんだけど、施設みたいなものをつくってもいいなあって二人で話してる。
私にはそんな力はないかもしれないけど、できたらいいなって思う。

聞き手
お兄さんもそういうふうに思ってるのね。

ゆりか
そう。兄は「ああ、やっぱりお父ちゃんの子やな」って言ってる。
やっぱり私が育てられた田舎のあの環境がよかったのかな、私には。そう思うな。

(はーもにい第73号より)