他人と違うところが僕の自慢や


【養子であることは、ぼくの一部】

養子縁組家庭で育った男性
たかおさんからのお話

~機関紙「はーもにい」に掲載されたのは随分と前ですが、
成人した子どもたちの声を知って頂けたらと思い、ご紹介します。~


たかおさん(仮名・当時27歳)は、2歳の時から養子として育てられました。
高校を卒業して公務員となり、今は養父母と同居して働いています。


「俺ってすごいなあ!」

聞き手
公務員になった理由は?

たかお
地元から動きたくないなーっていうのがあった。

住み慣れた土地をわざわざ就職のために出て行く気もないし、自宅から通える所がいいなって思ってたら、役所の職員の募集があったんで試験を受けたら受かった。ラッキーでした。

聞き手
小さい時は何になりたいと思ってた?

たかお
小学校の文集を見てたら「将来の夢は国会議員」って書いてる(笑)。

高校卒業して大学失敗した頃はちょうど景気の悪い時期で震災もあって、入るんやったらリストラのないところがいいと思って役所を受けたんです。
運がいいのは、そういう風に人生なるようになってるんですよ。

別に何かに挫折ってこともなく、まあこっちあかんかったらなんとかなるかなっていう、人生そんなもんですよ、ほんまに。

だからね、僕自分の生き方って「あ、俺ってすごい」と思うんです。

目標を持って挫折してくじけてしまうのもあほらしい。目標を持っても大それたことできるような人間でもないと思ってるし(笑)

聞き手
えらい、冷めてる(笑)

たかお
大それたことのできる人間やったら、もっと幼少の頃から何か秀でたものがあるんや。
今までなにも秀でたものがないのにそんなできない。

僕、大学に行って大学卒の資格で公務員の試験受けても、受かってないやろうなって今思うんですよ。すごい競争倍率だったから。
大学に行かなかったのは正解って思うんですよね。

聞き手
そうんな風に考えるようになったのは元々の性格なの?

たかお
うん。マイナスに考えて得することはないんでね。

聞き手
どうしてそれがわかったの?

たかお
うーん。なんでですかね。なんかふと思ったんですけども。普通に物事を考える時にマイナスで考えること僕ないんですよ、基本的に。

今から思えば心の根底で既にマイナスに思うことを拒否してるところがあったんやろうな。

マイナスな考え方をしてプラスになることはなにもないなっていう本能的なものがあった。

聞き手
それは誰かに影響受けたとか。

たかお
受けた記憶は何もないんですけどね。自然とそういう考え方になってる。

もともと小学校の頃から秀でたものやとりとめて人に自慢できるものがなかった。
その時にうちの親からずっと「あんたは養子なんや。ここで生まれた子と違うんや」って言われてた。

それを聞いた時「それが普通の子と違う俺の特徴や」というので嬉しかったんですね。
それがまず第一にあるんですよ。

他のいろんな里親さんが考えているような、本当はショック受けるんちゃうやろかーっていうところが既にない。
僕一番初めに「あ、人と違うところを持っている俺ってすごいやん」ていうところから始まるんですね。

小学校の頃から周りには言いまくってましたからね。「俺お前らとは違うんやで」って自慢げに。今から思えばあほな話なんですけどね。

中学の時やったかな、保険証の写しを見ると「養子」って書いてあった。「あ、ほんまやったんや」って思い、「やっぱり俺って普通と違うんや」っていうところがすごく嬉しくて言いふらしましたね。

そこが自慢なんですよ、僕の中では人と違うっていうところが。