他人と違うところが僕の自慢や


親を探すと夢が壊れる?

聞き手
彼女には話してたの?

たかお
しゃべってましたよ。時々言われるんですよ。「本当のお父さんとお母さん探しにいかへんの?」って。
うちの親にも「そんなこと言わんといっぺん探してみたら?」って言われるんです。

今更親が4人になっても仕方ないっていう思いがある。今の親に満足してないなら探そうかと思うやろうけど、親にすごく満足しているから。

今更親4人になって、老後の面倒みろとか言われてもあほかとか思う。今更探すメリットを全く感じない。

聞き手
小さいときからそう思ってた?

たかお
そうですね。昔からよくうちの親に言われてるんですよ。「探さんでええんか」って。「年齢的に言うたら私らと同い年ぐらいやから、早いとこ探さんと生んだ親は死んでまうで」って。

聞き手
親を探したいと思う人ばかりではないとは思うけど、でも「どんな人なのかな」って思う人はいるみたいね。

たかお
探し出したからといってそれまでの自分の何かが変化するわけでもないのに、今更探したいっていう気持ちが正直僕の中では理解できないんですよ。今の親で十分やんかっていう気持ちが強いですから。

小学生の時からのあほな夢なんですけど、本当の親はもしかしたらすごくいいとこの出で、その血筋かもしれないって思ってる。
現実に探してしまうとその夢がなくなってしまう。
それなら夢でおいとこって思うてしまう。

だから今でもうちの親には「ホントは貴族の出かもしれへんね」って言うてるんですよ。そしたら「いっぺん探してみたらはっきりするわ」って感じで言われて。でも「はっきりしたくない」(笑)

聞き手
はっきりしたくないって?(笑)

たかお
「貴族だと思わせといてくれ」って言うんですよ。分かってなかったら分かってないなりに、自分の中で空想できるじゃないですか。それが楽しいんですよ。

だから自分が普通じゃないって事が嬉しいんです。それがあるからその夢壊したくないんです。だから探したくないんです。

現実にどっかの施設に入ってる人がお母さんやでって言われたら「うわー、夢が壊れる」って思う。それやったら今の親で満足してるんやから夢にしとこって。
その気持ちは今でもそうですね。探す気は全然ないです。

もうちょっと年をとってきて急になんか思い立ったように過去を探してみたくなるんかもしれないですけど。それはそう思ったときでいいんかな。

聞き手
生みの親が命を与えてくれたということについては、なんか思いがある?

たかお
ひどい親やなと思います。
「産んで保育器に入っているときにいなくなるってどういうことや」っていうのは思いますけどね。

まあでもそのおかげで今の親に育ててもらえたんやから、結果オーライやな。そうしてくれたからこそ、今の親の所に来て今の生活があるんやからそれはそれでいい。

生みの親は俺を捨てたけど、世の中うまくできてて、うまいことおさまってくれる。捨てられたっていう世間一般でいうマイナス要素に対して、今の状態が僕の中でかなりのプラスなんで。
プラスマイナスゼロや。うまくできてるなって思う。

聞き手
保育器に入っていたというのを、お母さんはいつ頃話してくれたの?

たかお
「僕実際何グラムで生まれたんや」ってうちの母に聞いたんですよ。
「それなら母子手帳あるわー、それにのっとんちゃうんかな」って出してきて見てたんですよ。

保育器に入ってる間にいなくなったのは僕が勝手に言ったのかもしれない(笑)。
話すときにおもしろく話したいなと思ったから、そんなこと言うて周りには言いふらしました。

生んだ親は僕が入院している間にいなくなって施設に預けたと聞きました。