ライフストーリーワークをシェアするということ

協会では平成元年から毎年3月に「真実告知」の研修会を開催しています。
何年目かの企画で、成人した養子(当時25歳)に告知の受け止めとその後の養子としての人生を語ってもらいました。
話が終わり、参加されていた里親、養親の方々から質問を用紙で受けることになったのですが、まあ出るわ出るわ…
「そこそこの年齢の彼女にこれだけの質問を」と思いました。
当時は若者の当事者の声を聴く機会はあまりなかったからかも知れませんが、成長していく子どもを抱えている養親は、聞きたいことがたくさんあったのでしょう。
それに見事に応える彼女でした。
私たちもある基準をもって、かつての里親家庭で育った子どもにその時々の会の趣旨を説明し、協力してもらっています。
すべての聞き手が、語る人の想い受け止めているとは言えません。
傷付くこともあると思っています。
だからこそ、伝えたいことを伝えていくことが必要です。
その想いを共感できる当事者の力を得たいと望んでいます。
「ストラテジックシェアリング」(注)という冊子に、効果的にライフストーリーを語るために3つの戦略が挙げられています。
参考になりますので少し紹介させていただきます。
その3つとは「選ぶ」 「結びつける」 「所有する」です。
語る目的をはっきりさせ、何を語るのか決める。
語りたいこと、語りたくないこと、知られたくないことを「選ぶ」のは当事者の自分にある。
誰のために何を伝えようとするのか聞き手のニーズと語る目的を「結びつける」。
「所有する」とは、語る人の経験は語る人自身が「所有している」感覚をもつということ。
生い立ち、過去の経験を人に伝えることは、時には自分が傷つくこともあり、感情があふれることもある。
話しすぎたと後悔したりすることもある。
そういうリスクを最小限にとどめ、そういったものも含め、自分の経験は自分自身のものであり、
コントロールするという感覚をもって語ることが必要である。
ということが紹介されています。
当事者に語ることを依頼する立場の者も共有するべき大切なことがまとめられています。
(注)「STRATEGIC SHARING」IFCA 2015年発行
(2018年7月20日発行:はーもにい第129号より)