子どもの喪失


里親や養親希望者と喪失、悲嘆について

喪失、離別、悲嘆は里親や養子養育にとって大変重要な部分です。

児童福祉にかかわるすべての人たちは喪失について理解し、効果的な方法で支援できる準備をしておくことが必要です。

里親や養親は喪失に対する子どもへの影響や対応の仕方、喪失が起因する発達の遅れやその対応について理解しておかなければなりません。

喪失について気づき、理解することは、里親や養親の役割を自分が担えるかどうかを判断する助けになります。

生みの親が出会う喪失

*子どもを失う
*子どもと暮らす日々の生活を失う
*配偶者や他の大切な家族を失う
(たとえば子どもを虐待した夫をおいて妻が家出をしてしまう)
*健康の喪失
(たとえば、子どもを失って酒を飲んだり、薬物に依存するような鬱状態になる)
*自尊心の喪失
(子どもを虐待した親を社会はおそろしい、無価値な人間としてみてしまう。親失格と思う)
*自己決定の喪失
(子どものことで、機関の期待に添うように行動しなければならなくなる)

里親が出会う喪失

*健康の喪失
(心労で身体をこわすことも)    
*家族の安定の喪失
(受託した子どもに振り回される)
*里親家庭の実子
(親の時間や注目が減り、自分の立場を奪われる不安)
*自尊心の喪失
(対応しにくい行動をする子どもや反応しない子供によって自分の無力さを感じる)
*地域の中で立場を失う可能性
(好意的に見られる事もあれば、そうでない場合もある)
*重要な人たちとの関係が無くなる
(子どもが家庭復帰すると、それまで共に働いてきたソーシャルワーカーやセラピストとの別れ)
*里子との関わり、関係性
(里子が家庭復帰したり、他の家庭に養子縁組したりすると、里親も実子も喪失感を持つ)
*里親の決定権の喪失
(機関や家庭裁判所が子どもの決定権を持つ)
*プライバシーの喪失
(里親が問題を抱えると、機関がその問題の解決を共有するために家族にかかわるようになる)

養親が出会う喪失

*実子が持てない場合は、思い描いていた家族像実子の子育ての経験を失うことになる
*子どもの人生を独り占めできなくなる
(オープンアダプションの場合、子どもの成長・発達の途上で、生みの親の存在が付きまとう)
*コントロールの喪失
(子どもとのマッチングやその後の委託などで、機関や他の人と一緒に進めなければならなくなる)

子どもにとって、「里親に委託されること」は「生みの親やそれまで暮らしていた環境」から離される予期せぬ喪失であり、複合的で深刻な喪失が伴うものです。

里親養育とは子どものこうした複雑で深刻な喪失と向き合っていくことなのです。