子どもの喪失


子どもに影響を与える喪失の要素

1. 喪失のタイプ

予期された喪失か、予期されなかった喪失かは重要で、親子関係において子どもが養育者を失うことはどの子どもにとっても最も深刻な喪失です。

2. 喪失時の年齢

子どもの発達段の年齢はとても重要です。

病気や障害によって健康な身体を失うことはどの年齢の子どもにとっても深刻なことですが、アイデンティティや自立に向けて頑張っている思春期の子どもにとっては特に深刻な問題になります。

3. 離別した人との愛着の深さの度合い

別れた人との愛着が深ければ深いほど喪失感も深くなります。深刻な愛着の喪失を癒やされない子どもは新しい愛着を形成することが難しくなります。

4. なぜ離別が生じたかを理解する能力

知的で情緒的な発達の能力を獲得する各年齢の段階で、子どもは抽象的な思考が出来るようになり、原因や結果について理解が進みます。

たとえば、8歳の子どもは18ヶ月の子どもよりも性的虐待の意味を理解できます。

5. 育った環境や大人と関わり方

情緒的に健康に育てられた子どもは、そうでない子どもよりも喪失に向き合いやすいです。

6. 喪失を引き起こした環境

子どもの離別が突然で、苦痛なものだったかどうかを考えること。

たとえば、夜に見知らぬ警官がやってきて家族から引き離され、連れ去られた子どもは、親の顔見知りで親が信頼している人たちに十分な事前の準備をして別れた子どもとは違った経験を持ちます。

7. それ以前の離別の数

何度も移動や措置替えを経験した子どもは愛着を作る意欲を失ってしまいます。

短期間に度重なる喪失を経験した子どもは立ち直る意欲すら失ってしまうものです。

8.段階的なサポートの有無

離別の前、離別の間、離別の後のそれぞれの段階でできる喪失への準備、理解、介入などのサポートが受けられるかどうか、は特に大切なことです。


里親や養親の役割は子どもの悲嘆や喪失を理解し、支援すること、すなわち、健全な方法で子どもの喪失を癒す手助けをすることです。

これはなかなか難しいことなのです。

というのは里親は自分自身の喪失を理解し、さらに子どもの喪失をも理解しなければならないからです。

*もし、自分の喪失経験を解決していなければ、子どもの喪失を手助けするのは困難なことです。

*自分がどんな支援を受けることによって悲嘆を乗り越えることが出来たかを考えることは、他人を支援するときに助けになります。

*喪失を乗り越えることが出来た経験は、他人の喪失を手助けする自信につながります。

*子どもの喪失経験は、私たちの過去の喪失に関わる悲しい記憶や感情を引き出すことにもなります。

悲嘆に取組む作業というのは、新しい喪失経験が古い喪失を引き戻してくることにもなるのです。

自分の子どもが成長して家を離れるようになったり、親友が死んでしまうようなことがあると、以前の悲しい記憶や感情を引き出してしまいます。

子どもの多くの喪失経験は、自分を養育してくれる大人の悲しみの反応を引き出すので、自分は過去にどんな喪失を経験したかを理解しておくことは、自分の反応を予想し、準備しておけるのでとても重要な事です。

子どもに関わる機関や施設、里親は、

子どもがいつ(たとえば7歳の時)
どんな状況で(父親が交通事故)
どのような喪失(1ヶ月入院して亡くなった)をして、
どんな支援(伯母が引き取ったがその後施設入所)が与えられ、
どんな子どもへの影響(身体の不調をよく訴えるようになった、成績が下がった)があったか

などを「喪失の年表」として喪失経験の都度、記録しておくと、子どもが措置変更され、新しい環境に移った時に、その子どもをより深く理解するのに役立つでしょう。

(はーもにい第124号より)